[クローズアップ・ドクター] 患者満足度の高い審美治療を行うには(青山一丁目歯科クリニック/好井健一 先生)

クローズアップ・ドクター

好井 健一

患者満足度の高い審美治療を行うには

好井 健一
青山一丁目歯科クリニック
東京都港区北青山1-4-3 石垣ビル2F
http://www.aoyama1d.com/

『術後の状態をわかりやすく伝える』

事前のカウンセリング

患者さんと歯科医師とのコミュニケーションが不足していることで満足した結果を得ることができない 。これは事前のカウンセリングが少ないゆえに起こることだと考えます。「治療後どうなるかを伝える 重要性」についてもっと歯科医師は考えていくべきでしょう。

術後の状態をわかりやすく伝える方法として、1つは、術前の患者さんの写真を撮影し、画像処理を施し 「術後はこうなります」と患者さんに見せる方法があります。 画像はあくまで平面的にとらえるもので、イメージでしかありませんが、美容歯科に限らず、美容外科等の広告見ると手術前・手術後で、極端に痩せた写真を載せています。それはやはり目で見ることが一番説得力があるからでしょう。

当院では、術前・術後集というものを用意しています。同じようなケースの患者さんをここから探し出 して、その具体的な治療例、費用、期間等を説明します。治療の経過を写真で見ていただくことで、患者さん自身がもっていたイメージと実際に行われる治療を結びつけることができるので、円滑に診療が行えます。

模型を使った説明

もう1つの方法として、当院では模型を制作しています。「治療前の歯並びがこういう状態で、明らかに前歯が不揃いで、ちょっとデコボコしてる。この患者さんに対して、僕たちが提供できる歯っていうのが、術後こういう感じのイメージになる」といった内容を示すものです。 模型にすることで立体的に自分の前歯の出具合、出っ歯感がどれぐらい引っ込むかであるとか、歯の大きさや長さ、そういったものが事前に分かります。

実際に患者さんにこの模型を手にとってもらい、仕上がりのイメージを確認してもらいます。 自分一人で決められない方は、この模型を持って帰ってもらって家族や友人に見せて、みんなの意見を取り入れて決めてもらえるようにしています。ちゃんとこうなるんだっていうのを理解し、納得していただいてから治療を始めていきます。 労力のかかることではありますが、こういったことで患者さんに安心感を与えることができるのではないかと考えています。

使う材料も、患者さんとよく相談して決めます。 当院で一番多く扱っているのはオールセラミックスですが、保険治療を施されている患者さんは、みなさん始めは価格に驚かれます。そして聞かれることは 「それにすると、どれぐらい持ちますか」ということです。

実際に壊れた時、"患者さんが何をしたから壊れたか"という原因をつきとめて「それはあなたの責任です」ということにしたら、患者さんとの関係が崩れてしまいます。たとえ患者さんに問題があったとしても、ほとんどのケース無償で行います。患者さんが自分から「固いものうっかり食べたら割れちゃって」っていう場合でも、全額支払っていただくことは、まずありません。

「保証」というものを、つけていらっしゃる医院も多いとは思いますが、咬合調整と、メンテナンスさえきちんと行えば一生使っ ていただけるものを作っているので、当院では保証をつけていません。特に保証はないけれど何かあったらすぐに来てください。起きることはないと自信を持って提供するのも逆に安心感を与えるのではないでしょうか。「10年保証」と言うと「10年後におかしくなるのでは」といったイメージを与えてしまう場合もあるのではないかと思います。10年なんか予測不可能であり、場合によっては明日壊 れてしまうかもしれない、1年後壊れてしまうかもしれない。しかし、そういったことが絶対起きないようなやり方、方法、テクニックを私たち歯科医師は確立しているので、決してそれは不可能な話ではないと思います。

もちろん定期的なチェックは必要です。「噛み合わせを必ず確認することが、一生使い続ける最大の秘訣」だと患者さんには伝えています。5年後に急にきて、「割れちゃった」と言われても応じてあげられない場合もあるかもしれません。ただ、10年たった今、そういったことは一度もありません。これから起きるかもしれませんが、たぶんそういうことはめったに起きないのではないかと思っています。

『質のよいものを提供する』

また、患者さんに質のいい審美治療を提供する為には、技術力の高い技工士さんの存在が不可欠であると考えています。

最近では、優れた生体親和性と非常に高い強度から、審美治療にジルコニアを使用するケースが増えてきていますが、新しい材質なだけに、対応できる技工士さんの数が少ないのが現状です。 審美治療の6割~7割は技工士さんの腕だと私自身は考えていますので、信頼できる技工士さんを見つけられたことは幸運だったと思っています。

私たち歯科医師は、削って型をとり、その模型を技工士さんに提供する。あとは技工士さんに、どれだけ患者さんの納得のいく状態のものを制作してもらえるか。そのうえで、私たちも技工士さんに確かな 情報を伝える努力をしなければいけません。患者さんのニーズや歯の色の状態等いろいろな情報を、どれだけ正確に伝えられるか。技工士さんとのコミュニケーションも必要ですし、患者さんとのコミュニケーションも必要です。

『患者さんの心理をうまく汲み取る』

患者さんとコミュニケーションをとるにあたってポイントとなるのは、「患者さんの心理をうまく汲み取って、それを言葉にして返してあげれるか」という部分だと思います。 女性の本当の気持ちは、我々男性からすると理解しきれない場合もありますが、一生懸命理解しようと、とにかく話を聞いてあげて 、その本人が感じているコンプレックスの根本が何かということを明確にすることが大切です。そういった悩みを聞いてあげられるような姿勢をもつことこそが必要だと思います。歯だけではなく、患者さんのライフスタイル、どういう仕事してるか等も、私は聞いたりします。仕事のシフトや、休みの日なにしているか、そこまで話をする場合もあります。 そういったコミュニケーションを取っていくと、だんだんと仲良くなって、患者さんも私に対して話がしやすくなり、感じていることや思っていることを遠慮せずに話してくれるようになります。

もちろん、患者さんと話すのが苦手な方もいらっしゃると思いますし、当院のスタッフからも、患者さんとのコミュニケーションのとり方を聞かれることがあります。

私はそういうときに、合コンの話をします。 もし4対4で合コンをして、斜め前に座ってる女の子がものすごく自分のタイプだったら、その子の事どうしても知りたくないのか?逆に自分を知ってもらいたくないのか?そのノリで行けば大丈夫。「どこ住んでるの?」とか。合コンだからそういう言い方になりますが、まあ「仕事なにしてるの?」にしても 。相手のことを知りたいと思う姿勢は絶対伝わると私は思っています。また、自分を知ってもらいたいと思ったら、絶対そこからいろいろなコミュニケーションが生まれるとも思っています。まず相手を知 りたいと思うことが大事で、自分のことも知ってもらえれば、よりコミュニケーションがとりやすく なるのではないでしょうか。

「患者さんの満足する治療を行う」というのは、技術に限ったことではありませんし、患者さんへの対応に限ったことでもありません。その両方をバランスよく患者さんに提供する、そういったことではな いでしょうか。

チームワークを大切にした歯科治療

患者満足度をあげるためには、まず現場の環境を整えることが重要だと考えています。技術面においては、技工士さん協力なしでは成り立ちませんし、また、医院の雰囲気の面では、歯科医師、歯科衛生士 、歯科助手といったスタッフの協力なしでは成り立ちません。審美治療に限らず、日々私たちが行っている歯科治療というものは、チームワークが重要です。 スタッフとのチームワークなしに、質の高い診療は行えません。

病院の雰囲気が良ければ、スタッフも働きやすい。その雰囲気が病院のカラーになって、それを患者さんが感じ取って、「あそこはいい病院ね」と患者さんを紹介してくれる。そこに行き着くと私は思ってい ます。

バックナンバーはこちら 歯科医師(常勤)の求人はこちら