[クローズアップ・ドクター] スタッフの人材教育への情熱(栗林歯科医院/栗林研治先生)

クローズアップ・ドクター

スタッフの人材教育への情熱

多くの歯科医院でご相談が多い、人材教育に関しまして情熱をお持ちの先生にお話を伺いました。
今回は千葉県浦安市にある栗林歯科医院の栗林研治先生に、スタッフをどのように輝かせることが出来るのか、採用から教育までの重要性についてお話を伺いました。

栗林研治 院長先生

栗林歯科医院 http://www.kuribayashi-dc.com/
栗林研治 院長
2003年 日本歯科大学 卒業
2003年 医療法人社団 歯聖会 田中歯科医院 勤務
2006年 歯楽会プログラムリーダー 就任
2009年 ニューヨーク大学CDEプログラム 卒業
2011年 スウェーデンGoteborg大学歯周病科 研修
2011年 スイスDeneva大学歯周病科研修
2011年 スイスベルンMedi-Team歯科衛生士学校 研修
2011年 スイスチューリッヒCareum歯科衛生士学校 研修
2012年 オーストリアWien大学Master of science短期留学
2012年 イタリアPadova Jan Lindhe Clinicインプラント研修

歯科医師と経営者の立場から

経営者=演出家の発想が私の信念

経営者=演出家の発想が私の信念私は常にスタッフを輝かせることが出来るかを考えています。全ては人から生まれると思っていますので、とにかく人が重要です。人材の採用はお互いが不幸にならないことが重要ですから、当院の採用に関しては当院に合った人(仕事を楽しみたい)の採用を心掛けています。給料が少ないと不満を言う方には給料の高い歯科医院で勤務された方が良いですし、仕事を楽しみたい、プライベートも充実させたいと思っている方に残業が多くて給料が良い医院はやはり合わないですよね。ですから、当院では面接時に良く医院を知ってもらい、十分にコミュニケーションを取ってから選考していきます。お互い納得した方の採用をするようにしています。採用する際は100名近い応募者の中から1名~2名の採用を行っています。それは演出家と同じ感覚ではないかと思っています。キャスティングによって舞台の表現が大きく変わってしまう。医院の人材も同じことが言えるのではないでしょうか。


経営者と歯科医師の立場を分けることがポイント!

経営者と歯科医師の立場を分ける事がポイント!私は経営者と歯科医師の立場を分けています。歯科医師としては常にフラットな環境を築いています。医療に関しては立場重視よりも切磋琢磨していく環境の方が重要と考えています。院長は偉いからということで、院長が全てを決める環境下では自分自身の成長、他のドクターの成長も尻つぼみになるのではないかと考えています。全て院長が決めていると負荷もかかりますし、お互いの成長促進に繋がらないと思っています。経営者の立場からは、3ヵ月に1回の頻度で個人面談を行っています。全体的な確認事項もありますが、個人個人とゆっくりと話し合いを行っています。給料の件、休みの件、仕事に関する悩み、改善点など。スタッフがどんな悩みを持っているか把握することが経営者として大事ですかね。


人材教育の重要性

人材教育の重要性医院経営にとって福利厚生など非常に重要だと思います。経営者としての勉強と歯科医師としての勉強は分野が異なるのでそれぞれ別で学んでいかなければなりません。
私もあらゆる書物を読み、勉強もしてきました。その時に、人が大事だと気付いたのです。
人をどうマネージメントしていくことが出来るのかを勉強しなくていけない、非常に重要と考えるようになりました。開業する3年前に当院の台本(事業計画書)が出来ました。開業する時は台本に沿って人・物・金をどうするのかプランが出来上がっていましたね。3年前から人材教育について考えていましたから、開業した頃の衛生士さんやスタッフの方には1年~1年半は経営としての仕組み(環境作り)を植えつけることを最優先にしていくことに理解を求めました。学術は非常に大事だと分かっていましたが、環境整備、システム構築があった上で医院が成り立つと当時はみんなを説得していましたね。多くの医院とは逆のことから手をつけたと思います。学術ばかり追求していくとスタッフのことを考えられないことにもなりますし、有給休暇などの福利厚生面の対応が遅れたり、医院の環境が崩れることになると思いました。私も実際は学術畑で育ちましたので有給をもらったこともありませんし、医療人として残業・無休の考えを持っていました。しかし、それではいけないと思ったのです。私の考えは医院も一般企業も同じであると思っています。医療を感じるな!と言っている訳ではなく、人として、人生として仕事を楽しむとしたら、やはり休みもプライベートも大事にして、やるべきことをしっかりとやる!それが人生を楽しむことなんだ!と私の中でコンセプトとして持っています。当院では真剣に仕事に取り組む習慣・文化が出来ています。


スタッフを大切にした人材教育

スタッフの情熱こそ一番の強み

スタッフの情熱こそ一番の強みミーティングは休み時間、診療後に行うのではなく診療時間を削って行うようにしています。休み時間には良い意見なんて出てこないと思っています。休む時は休んだ方が良い。
でも、そんなことをしたら売上が下がるとよく質問されますが、そんなことはありません。
売上は逆に上がります。診療時間の貴重な時間を削って真剣にミーティングを行うことでチームの一体感も生まれ相乗効果をもたらします。チーム医療が出来ることが当院の強みです。
皆が平等な立場から積極的な意見が出ますから、当院のミーティングは重要です。


経営=教育の考え

経営=教育の考え私が他の先生方と明らかに違うことがあります。それは新卒の先生を採用して、経営と医療を同時に勉強させていることです。多くは、まず3年は臨床経験を積み、その後経営の勉強をさせていくと思いますが、私の中では経営=教育と考え、教育システムをどう構築していくかが重要であると思っています。教育というのは自分が教えるのではなく、一緒に学んでいくスタンスです。当院では5年~7年で卒業していくことになりますが、卒業する頃には経営者として、スペシャリストとして送り出していきたいです。優秀な人材が卒業して行くことは医院にとって大きな問題になると思いますが、当院では全ての職種に対してマニュアルを作成しています。メールの打ち方からおじぎの仕方までとにかく細かく資料をつくっています。基本的な教科書となる物を皆で話し合い教科書を育てています。今ではスタッフが毎年1回マニュアルのバージョンアップをしてもらっています。優秀な教科書を作ると新人がその教科書を見て勉強をして育っていきます。人が卒業することは悲しいことでは無く私にとっては嬉しいことなんです。
私は今でも教育に関して日々追い求めていますし、他の先生方のお話しをお聞きしたりしています。情熱を持っています!


衛生士を輝かせる為に

衛生士を輝かせる為に私の考えとしては当院ではトップが居ません。ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、歯科医師、衛生士、助手、受付も皆が平等です。ちょっとアメリカっぽいですね。
よい仕事をする上で意見を出し合うことは当然ですが、院長が一番偉いとか、歯科医師が偉いとでは他のスタッフは意見が言えなくなるものです。それではミーティングが活性化されない。本気で1人の患者さんを治したいと思ったら平等に意見を言い合うことが絶対必要なのです。今はそれが当たり前のことになってます。歯科医師だから、衛生士だからとかではなく、まず、平等な環境を作っていくことが大事なことなのです。そうすると衛生士にしか出来ないことが次々と出てきます。当然、衛生士も活発な意見が出てきますから、意見を言った以上やらなければならないですし、手を抜けない、それがチーム医療となって良い環境をもたらします。
歯科医師ありきの衛生士、指示待ちの衛生士では成長しません。自立していくことが大事です。自分で勉強して任された仕事に対して責任感を持つ。それが自立です。
私は、衛生士にしか出来ないこと、助手にしか出来ないことをしっかりと平等に見ていくことを心掛けています。
半分は自分の頑張り、半分は環境が関係すると思っています。
自分自身の頑張りでは限界もあると思いますが、ある程度の環境下でしたら人材は育つと思っています。全ての職種にも言えることですが、輝かせる秘訣は環境だと思っています。


楽しんで仕事ができる医院作り

仕事を楽しみたい!が当院のコンセプト

仕事を楽しみたい!が当院のコンセプト今でも環境作りは追求しています。
ここまで来るには1年半の時間を必要としました。人材教育は最も大事なことですから、スタッフの採用もこだわっています。
求人に関しては、雇用条件、待遇面でのアピールは重要ではないと思っています。当院では活字と写真を見て興味を持ってもらえた方との面接を致します。条件面を優先する方は残念ながら他の医院でお仕事を探された方が良いと思います。
何度も言っていますが当院のコンセプトは「仕事を楽しみたい」と明確なビジョンがありますから、必ず見学に来て頂き、自分の目で見て、自分で面接に進むか決めてもらいます。当院のスタッフ全員の意見ですが当院のコンセプトを共感して頂いた方と働きたいと思っています。全国より多くの見学者にお越し頂いております。


社員のモチベーションを上げるには

社員のモチベーションを上げるにはずばり「他医院見学」です。社員全員を連れて他の医院見学に行きます。私の目指す医院、同じようなコンセプトを持っている医院を実際に見てもらうと、院長が言っていたことはこう言うことだったのかと理解をして頂けます。翌日からのモチベーションは凄いですよ!また交流も出来ますから良い刺激を貰って、与えて帰ってきますので非常に有効です。昨年北海道の医院を見学させて頂いたのですが、当院の助手スタッフのモチベーションが凄く上がってしまい、衛生士になりたい!と強い刺激を受け、なんと衛生士を目指し学校に入学することになりました。


ヨーロッパの衛生士学校では

情報提供が患者さんに対して物凄く多いですね。日本では保険診療が中心となりますので、患者さんの数が多いとコミュニケーションや情報提供がなかなか出来ません。

衛生士に求めること

衛生士に求める事私が衛生士に求めることはやっぱり自立です。任された仕事を自分で対応することが求められると思います。
スイス・スウェーデンで一緒に研修した衛生士さんはやっぱり自立していました。
夜遅くまで衛生士のやりがいについて語りましたよ。「患者さんをしっかり治したい」と強い気持ちを持っていました。でも、現状では歯科医師と一緒に治療していく中で、歯科医師に言いたいことが言えないと嘆いていました。これからの衛生士は歯科医師と何でも言い合える方が増えてくると良いですね。
その環境作りは簡単ではないと思いますが。


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